禁煙を開始して2,3日してくると、無性に喫煙したくなる瞬間に襲われます。これは、ニコチンに犯されている脳の仕業です。ニコチン自体は喫煙後、速やかに体外排出プロセスが働くのですが、脳神経細胞は、どうしても日々大量に送り込まれていたニコチンを受け取る仕組みをすぐには治せません。
ですので、ニコチンが体内に入ってこないと、悲しいことにどうしても不快感を感じてしまうわけです。不快感を感じるだけならいいのですが、神経伝達物質が途絶えるので、無気力、無感動、無関心という禁煙うつ(鬱)に陥ってしまうこともあります。この状態は自律神経と深く関係しています。
そもそも自律神経ってなんだろう
厄介な禁煙うつ(鬱)ですが、実は自律神経失調症に似ているとされます(軽度ではありますが)。そもそも自律神経は、呼吸や循環、消化、体温、代謝などといった機能を制御する神経で、「闘争の神経」とも呼ばれる「交感神経」と、「休息の神経」とも呼ばれる「副交感神経」から成り立ちます。
これが「失調」、つまり「調子を失う状態」ですから、交感神経と副交感神経のバランスがめちゃくちゃになってしまい以下のような症状を訴え出します。
- めまい
- 汗発
- だるい
- 血圧の乱高下
- 突然眠くなる
- 脈が早くなる
- 頭痛
- 吐き気
- 生理不順
- 情緒不安定
- 怒りっぽい
…などなど。
医師の支援を受けながら治療も
どうして失調症になってしまうのか、ストレスや成長期のホルモンバランスの変調などが犯人ではないかと言われていますが、原因ははっきりしていません。ただ、ひどい場合には心療内科や神経科の治療を受けることも稀ではありません。

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私のおばも長年、自律神経失調症に苦しんでおり、心療内科に通っていますが、医師の中でも「自律神経失調症は病気ではない」という人もおり、周囲からの「なんだこいつ、さぼってんじゃね?」という冷たい視線と、本人の苦しさとのギャップがあって、なかなか難しく重い面をもっている病気です。
禁煙により神経バランスに乱れ?
で、この自律神経とたばことの関係に戻ります。ニコチンを取り入れていたころの体は、脳に届いたニコチンが作用してアセチルコリンという神経伝達物資を出させ、副交感神経を刺激して紛い物のリラックスを生み出します。
ところが、禁煙によりニコチンが途絶えると、「アセチルコリンがこない→副交感神経が今までのようには働かない」という事態が生じてきます。交感神経と副交感神経にとって大事なのはバランスです。これが片方だけ十分に働かないので、失調(に似た)状態になるというわけです。
こうしたことを考えていくと、禁煙生活を上手く送っていくには、ニコチンとの闘いだけではなく、自分の自律神経をコントロールする方法も知っておく必要があります。さもないと、禁煙がただひたすら耐えるだけの苦行になってしまいかねません。
ニコチンに組み替えられた脳神経が正常化するまでに3カ月かかるとされます。この90日間、どのような方法で自律神経を制御していくか具体的な方法などは、今後紹介していきますね。