たばこと税、心理作戦の裏側

喫煙者であれば、たばこを一箱買う度に納めている「たばこ税」。2010年10月に過去最大の増税があり、値上げ前に「禁煙しよう」と試みた方も多かったと思います。とはいえ、2011年10月のニュース(産経新聞)では、「増税1年、禁煙失敗6割」と報じられていましたので、喫煙者の苦しみを思うと心が痛みます。その後も閣僚が「一箱1000円」構想を提言してみたりと、日本国内のたばこをめぐっては「増税=値上げ」の一途をたどっていますが、概して、この手の議論は、喫煙者の方が分が悪いのが現実ですね。

次第に強まる懲罰的性格

そもそも、たばこに税金を掛け始めたのが明治政府で、明治9(1867)年にたばこ税の原型がスタートしてます。その後、日清戦争、日露戦争と戦争時の戦費調達のために対象が拡大されてきました。

もともと、たばこ税は個別物品税で、健康とは無縁だったのですが、2010年の増税時に当時の鳩山内閣が「健康増進のため喫煙者を減らす」と訴え、物議を醸しました。もちろん自民党政権時代にも1998年、2003年、2006年と、たばこ税増税はあったのですが、彼らはに「やむにやまれず増税させてください」感を演出していたのに、民主党政権では、たばこを吸うことを「悪」として、懲罰税としての罰金的性格を露骨に強めてきてるという感じです。

「増税をすると、税収が下がって国としては困るんじゃないの」という財務省が喜びそうな声もありますが、これに対して、厚生労働省側は「喫煙者はがんや心筋梗塞といった病気になりやすく、喫煙者の健康保険を支える国民負担と差し引きで考えれば、税収への影響は限定的」と反論しています。

tax一見すると正論同士の激突にも見えますが、この議論は少し気を付けてみる必要があります。「たばこを社会悪」として認知させていこうという心理作戦が働いている可能性が否定できません。そもそも、「増税すると禁煙できるのか」という視点が欠けてるのです。記事冒頭で「増税1年後の禁煙失敗6割」というニュースに触れましたが、大半の喫煙者は「値段が上がっても結局吸い続けている」=「税収増に貢献している」ということですね。実際、増税直後、月60億本まで減ったたばこ販売本数は、2011年7月には月200億本と前年同月比並に回復しています。これでは、国民の健康という大義名分がかすんでしまいます。

重要なのはニコチン依存脱却の仕組み

日本たばこ産業などはこうした課税法に「公平さを欠いている」と反論していますが、「たばこは社会悪」という風潮は、もはや逆戻りはできないのではないかと思います。結局のところ、財務省も厚労省も実はつながっていて「税を取りやすいところから取っちゃおう」と結託してるんじゃないのか、という疑念も沸いてきます。

国が本当に喫煙者を減らしたいというのであれば、やるべきことは増税よりも、まず「ニコチン依存症からの脱却」を徹底して研究、推進することでしょう。ニコチンによって脳が書き換えられている喫煙者には、もはや多少の値上げや、「病気になるぞ」という恫喝は通用しにくくなっています。社会的に制裁を加えて追い込んでも意固地になるだけです。

喫煙者に必要なのは禁煙への目覚めであり、治療だと私は思います。禁煙外来では、ガムやパッチだけでなく、禁煙うつ対策として、アメリカのように抗うつ剤を処方するような方法もあっていいと思います。

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